成人の予防接種と言えばインフルエンザワクチンが代表格でしたが、今年は新型コロナウイルスの世界的な流行もあり新型コロナワクチンの話題で持ち切りでした。変異株の確認が日々進んでおり、新型コロナワクチンもブースター接種が求められる状況となってきております。当院でも準備を進めているところではありますが、今回はHPV(ヒトパピローマウイルス:Human papillomavirus:HPV)ワクチン、いわゆる子宮頸がん予防ワクチンについて述べたいと思います。
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、性経験のある女性であれば50%以上が生涯で一度は感染するとされている一般的なウイルスです。子宮頸がんを始め、肛門がん、膣がんなどのがんや尖圭コンジローマ等多くの病気の発生に関わっています。特に、近年若い女性の子宮頸がん罹患が増えています(出産年齢と重なる20~40歳代の女性に多く増えていることから「マザーキラー」と呼ばれることもあります)。このような背景もあり、当初、子宮頸がん予防ワクチンとして啓発活動が行われましたが、ヒトパピローマウイルスは性別に関わらず罹ることが知られており、喉のがんや肛門のがんの発症の原因となることが知られています。ですので、男性にも接種の意義のあるワクチンです。HPV感染症を防ぐワクチン(HPVワクチン)は、小学校6年~高校1年相当の女子を対象に、定期接種が行われています。
一口にHPVワクチンと言っても、種類がいくつかあります。公費負担が可能なワクチンと、自費での接種が必要な任意接種のものの2通りあります。当院ではどちらのワクチン接種も可能です(要予約)。
またHPVワクチンがカバーする範囲もワクチンによってさまざまです。ガーダシルは男女ともに接種することが可能なHPVワクチンです。
日本では女性にしか適応がありませんが、ガーダシルよりもより守備範囲の広いシルガード9というHPVワクチンもあります。接種希望者は全例スマホアプリで登録する必要があります。またガーダシルよりも高価です。
いずれのワクチンも3回接種をしなければ、期待する効果が発揮できないので、3回接種することが必要です。接種後30分は医療機関内で安静にして頂く必要があるので、接種当日のスケジュールには余裕をもって頂くほうが良いでしょう。
お住いの市町村であれば、公費負担で接種可能です。当院でしたら大阪市民の方であれば、公費の対象年齢の女性の方であれば接種が可能です。それ以外の方でも自費診療としてワクチンの接種が可能です(当院ではガーダシルとシルガード9を取り扱っています。ガーダシルは男性の方でも接種可能です)。
大阪市民の方 | 大阪市民の方 | 大阪市民以外の方 | 大阪市民以外の方 | |
女性 | 男性 | 女性 | 男性 | |
小学校6年生~高校1年生相当 | 公費 | 自費 | 自費 | 自費 |
それ以外の年齢の方 | 自費 | 自費 | 自費 | 自費 |
当院ではガーダシル、シルガード9のワクチン接種を受け付けております。
<1回あたりの接種料(自費の場合)(問診料込み)>
4価ワクチン:ガーダシル :1回22000円(税込)(3回接種で66000円)(公費対象)
9価ワクチン: シルガード9:1回33000円(税込)(3回接種で99000円)(公費対象外)
(問診の結果、当日接種が出来ない場合には問診料として3000円が必要です。)
(大阪市の情報は「子宮頸がん予防ワクチンの接種について」よりご確認いただけます。)
私は内科医ですので、子宮頸がんの診断・治療をする機会はありません。ただ、予防接種を行うことで子宮頸がんを始めとするヒトパピローマウイルスが原因とされる疾患を予防する機会を提供することは出来ます(もちろん婦人科で子宮がん検診などを受けて頂くことはとても大切なことです)。これまでもずっとHPVワクチンは小学校6年~高校1年相当の女子に関しては定期予防接種の対象でした。この度新聞報道にもあったとおりHPVワクチンの積極的勧奨が再開されるとの報道もあり、これまで皆さんが十分に周知される機会が無かったHPVワクチンの情報が入ってくるかと思います(「子宮頸がん予防のHPVワクチン「積極的勧奨」再開承認 厚労省部会」)。重要なことは、大切なご自身の身体を守るためにどのような方法があるのかを知ることです。知るためには信頼できる情報源が必要です。TwitterやFacebookなどのSNSツールで情報を取得する機会が増えているとは思いますが、正確性に欠く情報も少なくありません。その点、厚生労働省などの公的機関からの情報発信の内容は現時点で科学的に正確な内容が記載されており、また随時更新されていますので、是非参考にしてください。あなたとあなたの大切な人を病気から守るために正確な情報に基づいてワクチン接種を検討してみてください。
HPVやHPVワクチン、子宮頸がんなどHPV関連疾患については詳しくは下記のサイトが参考になります。
ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~(厚生労働省)
ヒトパピローマウイルス感染症(子宮頸がんなど)(NPO法人VPDを知って、子どもを守ろうの会)