コレステロールって何が影響するの?

いんべクリニック、院長の忌部です。

ここ数週間ほど健康診断の結果が返ってきているようで、再検査を希望して受診される方が増えてきています。

こちらの記事をお読みの方で、健康診断でコレステロール値や血糖値などの異常値が指摘されている方はおられませんか?

「健康増進法」に基づき定める食事摂取基準があります。これは、国民の栄養摂取の状況からみてその過剰な摂取が国民の健康の保持増進に影響を与えているものがあるというものです。
その中身ですが、厚生労働省令で定める栄養素として

・脂質、飽和脂肪酸、コレステロール
・糖類(単糖類又は二糖類であって、糖アルコールでないものに限る。)
・ナトリウム

が挙げられています。

健康保持増進に悪影響があるので脂質が健康診断でも重視されているのですね。

今回は脂質について取り上げたいと思います。

<基本である食事を中心に>

まず最初に、コレステロールは、体内で合成できます。
経口摂取されるコレステロール(食事性コレステロール)は体内で作られるコレステロールのおよそ1/3〜1/7です。
また、コレステロールを多く摂取すると肝臓でのコレステロール合成は減少し、摂取量が少なくなるとコレステロール合成は増加します。体内で調節機構が働いているのです。このため、コレステロール摂取量と血中コレステロール値との間には関連はあるものの、コレステロール摂取量がそのまま血中総コレステロール値に反映されるわけではないことに注意です。これらのことから、コレステロールは必須栄養素とはされていません。

脂肪酸は大きく二つに分けることが出来ます。飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸です。
ざっくり言うと動物性と植物性という風にとらえることが出来ます。

飽和脂肪酸常温で固形乳製品や肉などの動物性脂肪パルミチン酸、ステアリン酸など。
不飽和脂肪酸常温で液状植物油オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸など。

リノール酸やα-リノレン酸は、人間の体内でつくることができないため必須脂肪酸と呼ばれています。

成人においては、飽和脂肪酸摂取量と血中(血清又は血漿)総コレステロール濃度は比例することが昔からよく知られています。これは、LDLコレステロール、いわゆる悪玉コレステロールでも同じです。
飽和脂肪酸は、体内合成が可能であり、必須栄養素ではありません。必須栄養素ではないのですが、飽和脂肪酸は高LDLコレステロール血症の主なリスク要因の一つであり、心筋梗塞に代表される循環器疾患の危険因子でもあります。また、飽和脂肪酸は重要なエネルギー源の一つであるために肥満の危険因子でもあります。こういったこともあり、基準値が上限値として設けられているのです。

飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置き換えた場合(動物性→植物性)の冠動脈疾患発症率への検討では、発症率の有意な減少を報告しています。

脂質異常症(高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症)を有する者及びそのハイリスク者(心筋梗塞、糖尿病など)においては、そのリスクをできるだけ軽減する必要があります。

コレステロール摂取量の変化と血中コレステロールの変化は比例するので、望ましい摂取量の上限を決める必要があると考えられています。日本動脈硬化学会のガイドラインには冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)のリスクに応じてLDLコレステロールの管理目標値が定められており、高LDLコレステロール血症患者ではコレステロールの摂取を200 mg/日未満とすることにより、LDLコレステロールの低下効果が期待できるとしています。このようなことから、コレステロール値が高いと言われている方々は、重症化予防の目的からは、200 mg/日未満に留めることが望ましいと考えられています。

ちなみに、卵1個の平均的なコレステロール量は250mg程度とされています。日本人の平均的なコレステロール摂取量は300mgですから、卵を食べるとしても卵1日1個程度までにしておくことがよいと考えられます。

<コレステロール値が上昇する他の原因は?>
それでは食事のみでコレステロール値が異常値を示すのでしょうか?
実はコレステロール値は体内のホルモンの異常によっても増えたり減ったりします。

甲状腺はのどぼとけの下にある蝶ような形をした臓器で甲状腺ホルモンを産生しています。
甲状腺ホルモンは身体の新陳代謝を促す作用のあるホルモンです。
通常、甲状腺ホルモンは、多すぎたり少なすぎたりしないようバランスが保たれていますが、甲状腺の働きに異常があらわれると、そのバランスが崩れてしまいます。

例えば、甲状腺ホルモンが過剰になると脈が速くなったり、汗をかきやすくなったり、暑がりになったり、体重が減ってきたり、体に変化が出てきます。このような場合にはコレステロール値は下がる傾向にあります。逆に、甲状腺ホルモンが不足すると寒がりになったり、からだがだるくてむくみやすくなったり、体重が増えてきたり、考えがまとまらなくなったりすることがあります。このような場合にはコレステロール値が上昇する傾向にあります。

ホルモンの値は極めて繊細に調整され、我々の身体を守ってくれていますが、そのバランスが崩れたときに思わぬ体調変化を来す場合があります。

健康診断で再検査を指示されたり、健康診断は受けていなかったけれども体調がおかしいなと思ったときには受診するようにしてくださいね。

いんべクリニック
院長 忌部尚

関連記事

  1. 小児の新型コロナワクチン接種について

  2. 御礼

  3. 「RSウイルス」とその予防方法について

  4. 「はしか」について

  5. 緊急事態宣言発出下での当院の対応

  6. ホームページを公開しました

AI相談窓口