時間帯によって数値の変動がある血液検査について(例えばコルチゾール)

今日は血液検査についてお話したいと思います。
当院では初診の方に血液検査を行うことが多いのですが、血液検査は時間帯によって変化することをご存じでしょうか?
当院では血糖値が高い方や、肥満傾向にある方に対してコルチゾールという検査項目を調べることがあります。コルチゾールとは何でしょうか。

コルチゾール(Cortisol)は、副腎皮質ホルモンである糖質コルチコイドの一種であり、医薬品としてヒドロコルチゾン (hydrocortisone) とも呼ばれる。炭水化物、脂肪、およびタンパク代謝を制御し、生体にとって必須のホルモンである。3種の糖質コルチコイドの中で最も生体内量が多く、糖質コルチコイド活性の約95%はこれによる。ストレスによっても分泌が亢進される。分泌される量によっては、血圧血糖レベルを高め、免疫機能の低下や不妊をもたらす。

コルチゾール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

院長の専門領域である糖尿病代謝・内分泌、肥満症領域では様々なホルモンの数値が診断や治療に役立つことがあります。その中でもコルチゾールというホルモンは糖尿病や肥満症を引き起こしたり、骨粗しょう症の原因となる可能性のあるホルモンです。

ただ、誤解して頂きたくないことがあります。それはコルチゾールというホルモンは生きていくためには必要不可欠なホルモンであるということです。

ホルモンは高すぎてもよくないですし、低すぎても良くありません。ちょうどいい数値、すなわち基準値内に保たれていることがとても重要です。

例えばコルチゾールというホルモンが高すぎる場合、クッシング症候群という病気の可能性があります。

クッシング症候群(クッシングしょうこうぐん、: Cushing’s syndrome)は、慢性の糖質コルチコイド過剰による症候群。ただし、下垂体腺腫が原因で起こるクッシング症候群を、特にクッシング病: Cushing’s disease)と呼ぶ。

クッシング症候群
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

クッシング症候群は何らかの異常(ホルモン産出腫瘍など)でコルチゾール値が高くなってしまう病気です。クッシング症候群が疑われた場合、お腹のCT検査や頭のMRI検査などが必要になる場合があります。

逆にコルチゾールというホルモンが低すぎる場合、副腎皮質機能低下症という病気が疑われます。例えば慢性原発性副腎皮質機能低下症(アジソン病)という病気は下のような病気です。

慢性原発性副腎皮質機能低下症(まんせいげんぱつせいふくじんひしつきのうていかしょう)とは、副腎における副腎皮質ステロイド産生低下を示す症候群アジソン病(アジソンびょう、Addison’s disease)とも呼ばれる。厚生労働省より指定される難病(旧 特定疾患)である。なお、アジソン病は後天性の成因による病態に対する用語である。

慢性原発性副腎皮質機能低下症
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

このように副腎皮質機能低下症の状態は、コルチゾールというホルモンが低下している状態ですので、ホルモンを補充しなければなりません。ホルモンを補充しないとどのような症状が出てくるのでしょうか?慢性原発性副腎皮質機能低下症(アジソン病)を例に考えてみましょう。

副腎皮質ホルモンの欠落により、易疲労感、 全身倦怠感 、脱力感、筋力低下、体重減少、低血圧などがみられる。食欲不振、 悪心 ・嘔吐、下痢などの消化器症状、精神症状(無気力、不安、うつ)など様々な症状を訴える。いずれも 非特異的 な症状である。色素沈着は皮膚、肘や膝などの関節部、爪床、口腔内にみられる。

難病情報センター
アジソン病(指定難病83)

体調不良や心身ともに具合が悪くなり、検査値の異常を呈することもあります。体調が悪い時など、血液検査を行うことで原因が分かることも少なくありません。

ただ、コルチゾールというホルモンは1日のうちに数値が変動することが良くしられています。早朝に最高値を認め、夕方には少なくなることが知られています。ですので、採血を行った時間帯によってその解釈が変わってくるのです。一番良いのは午前中に血液検査を行うことですが、難しい場合には血液検査を行った時間帯がとても重要です。

血液検査を行い、診断・治療に生かしていく。基本的なことですが、その条件を適切に評価することが、正確な診断への第一歩につながります。

体調不良や健康診断で少しでも異常値が指摘された場合には、検査結果があればご持参のうえ御来院ください。皆様の心身の健康管理に貢献させて頂きます。

一般診察はご予約がスムーズですが、受診希望日当日の受付も行っております。ご不明な点等ございましたら診療時間内にお電話でお問い合わせください。どうぞよろしくお願い申し上げます。

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